PlayStation 5の圧倒的なハードウェアパワーを用いて、PlayStation 3のゲームがどこまで快適に動作するのかを突き詰めた興味深い検証レポートが話題を呼んでいます。ジャーナリストの多根清史氏らが紹介したこの検証は、ソニー公式の機能ではなく、古いファームウェアの脆弱性を利用してPS5上でLinux環境を構築し、PS3エミュレータである「RPCS3」をネイティブ動作させるという極めて高度な手法で行われました。
実機のPS3は、ソニー、東芝、IBMが共同開発した「CELLプロセッサー」を搭載していました。このCPUは「SPU」と呼ばれる超高効率なサブコアを複数備え、当時の水準としては異常なほど強力な演算能力を誇っていた反面、GPU性能がボトルネックになりやすい独特の構造でした。しかし、描画性能が飛躍的に進化した現代のPS5上でエミュレートすることにより、かつてのハードウェア構造における「GPUの限界」という足枷が完全に取り払われることになります。
実際の動作検証では驚くべき結果が確認されています。初期の名作レースゲーム『リッジレーサー7』は、処理落ちを一切起こすことなく4K解像度かつ秒間60フレーム(60FPS)の非常に安定した描画で動作しました。さらに、実機では処理が重かった『ヘブンリーソード』においても顕著なパフォーマンスの向上が見られ、PS5のパワーによって過去の傑作たちが本来秘めていた映像美が完全に引き出されています。
一方で、当時のCELLプロセッサーの複雑な並列処理設計を現代のアーキテクチャで完全に再現することの難しさも浮き彫りになりました。たとえば人気シューティング『レジスタンス』では、4K出力自体には到達したものの、描画間隔(フレームペーシング)にやや不安定な挙動が残るなど、完全な互換性の実現にはまだ課題があります。今回の検証は、次世代機をも手こずらせるCELLプロセッサーの「規格外の怪物ぶり」を改めて証明する形となりました。
ネット上の声5選
- 発売から20年近く経とうとしているのに、最新のPS5のパワーをもってしても完全エミュレートが難しいCELLプロセッサーの設計は時代を先取りしすぎていた。
- リッジレーサー7が4Kの60FPSで滑らかに動いている映像を見て感動した。公式でもこのレベルの互換機能をファームウェアアップデートで実装してほしい。
- 当時の開発者たちが「CELLは扱いづらい」と悲鳴を上げていた理由が、現代の高性能PCやPS5での再現難易度の高さから改めてよく分かった。
- GPUが足を引っ張っていたという指摘に納得した。もし当時もっと強力なグラフィックチップを積んでいたら、ゲームの歴史が変わっていたかもしれない。
- 非公式の検証とはいえ、こうして過去の名作が現代の超高画質で蘇る可能性を示してくれたのは、レトロゲームの資産保存の観点からも非常に興味深い。
(※引用ではなく、Web上で目立った論調・感想をまとめたものです)
CELLプロセッサー 豆知識 5選
- 異色の共同開発チーム CELLプロセッサー(正式名称:Cell Broadband Engine)は、ソニー・コンピュータエンタテインメント(当時)、東芝、IBMの3社によって共同開発されました。それぞれの頭文字を取って「STI連合」と呼ばれたこの一大プロジェクトには、莫大な開発資金が投じられました。
- 「ヘテロジニアス」という超並列設計 一般的なCPUとは異なり、全体の制御を担う1基の主コア(PPE)と、単純な計算を爆速で処理する8基の補助コア(SPU)を組み合わせた異種混合(ヘテロジニアス)構成を採用していました。この構造が、当時のスパコンに匹敵すると言われた圧倒的な浮動小数点演算能力の源泉です。
- ゲーム機以外の分野でも活躍 PS3の心臓部として有名ですが、その卓越した計算能力に目をつけたIBMにより、スーパーコンピュータのCPUとしても採用されました。実際に、米国のロスアラモス国立研究所に設置されたスパコン「Roadrunner」に搭載され、世界で初めて1ペタフロップスの壁を突破しました。
- 開発者を苦しめた「じゃじゃ馬」 その特殊すぎる構造ゆえに、性能を極限まで引き出すためのプログラミングが極めて難しいことでも有名でした。複数のSPUへ適切に処理を分散させる必要があり、多くのゲーム開発者が最適化に大苦戦したことから、業界内では「天才向けの扱いづらいチップ」と評されました。
- 東芝の高級テレビへの搭載 ゲームやスパコンだけでなく、東芝のフラグシップ液晶テレビ「CELL REGZA(セルレグザ)」にも搭載されました。CELLの圧倒的な演算能力を利用することで、14チャンネルの番組を同時に同時録画・表示したり、超解像技術で地上デジタル放送の画質を劇的に向上させたりしました。


