「環境」はアピールから実務へ:リサ・ジャクソン退任で見せたアップルの真の脱政治化戦略

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アップルは2026年4月、アースデイに合わせて最新の環境進捗報告書を公開しました。全製品における再生素材の使用率が史上最高の30%に達し、パッケージからのプラスチック完全排除を実現するなど、ティム・クックCEOの下で掲げた「Apple 2030」に向けた成果は着実に数字へと表れています。しかし、今回の報告書には、これまで同社の「環境の顔」として君臨してきたカリスマ、リサ・ジャクソン氏の不在という決定的な変化が刻まれていました。

2026年1月に退任したリサ・ジャクソン副社長は、オバマ政権の環境保護局長から転身し、約13年にわたり同社の環境政策を牽引した象徴的存在です。彼女の退任に伴い、アップルは組織を再編しました。環境・社会イニシアチブは最高運用責任者(COO)のサビ・カーン氏の直轄となり、政府担当はジェニファー・ニューステッド法律顧問へと引き継がれました。この再編は、環境対策を独立した政治的メッセージから、実務的なビジネスプロセスへと移行させる明確な意思表示です。

アップルは、特定の部品で再生素材への切り替えに関する複数の目標を達成した。その中には、アップルが設計したすべてのプリント基板において、金メッキを100%再生金で行うことも含まれている(写真:アップル)

ジャーナリストの林信行氏は、これを「環境の脱政治化」と指摘しています。かつては特別なアピール材料だった環境対策が、今や設計やサプライチェーンの現場に深く組み込まれ、語るまでもない「当たり前の品質」へと昇華されたのです。声高に理想を語るフェーズを終え、エンジニアリングの数値目標として製品価値の根幹に据えるという、アップルの成熟した新たな生存戦略がここに見て取れます。

今年は、すべてのApple Watch Ultra 3およびチタニウム製のApple Watch Series 11のケースが、100%再生された航空宇宙グレードのチタン粉末を用いて3Dプリントされた。これにより、2025年にはチタン原料を400トン以上削減し、前世代と比べて原材料の使用量を50%削減した(画像:アップル)

ネット上の声5選

  • リサ・ジャクソンのような強力なリーダーがいなくなることで、環境への熱量が下がらないか少し心配だ。
  • 環境対策を「特別なこと」ではなく「当たり前の工程」にするのは、企業として究極の到達点だと思う。
  • 最近のAppleのプレゼンから環境の話題が減ったと感じていたが、背景にこうした戦略転換があったとは納得した。
  • PRのためのエコではなく、サプライチェーン全体を動かす実務重視の姿勢こそ、他の企業も見習うべきだ。
  • 政治的な色を薄めて、製品の魅力や性能の中に環境性能を溶け込ませる手法は、今の時代に合っている。

(※引用ではなく、Web上で目立った論調・感想をまとめたものです)

リサ・ジャクソン の豆知識 5選

  • オバマ政権下での功績:アップル入社前は、第12代アメリカ合衆国環境保護局(EPA)長官を務めていました。アフリカ系アメリカ人女性として初めて同職に就き、温室効果ガスの規制や大気汚染対策において強力なリーダーシップを発揮した経歴を持っています。
  • ティム・クックによる直接スカウト:2013年、環境問題を経営の核に据えようとしていたクックCEOによって直接スカウトされました。それまで各部署に分散していた環境への取り組みを一元化し、企業価値を左右する主要な戦略へと押し上げた最大の功労者です。
  • 排出量60パーセント削減の達成:在任中の13年間で、同社の温室効果ガス排出量を2015年比で60パーセント以上削減することに成功しました。この期間にアップルの売上は78パーセント成長しており、経済成長と環境負荷の低減を両立できることを実証しました。
  • 社会正義への広範な取り組み:環境だけでなく、人種的平等と正義に関するイニシアチブ(REJI)の責任者も務めました。1億ドル以上の投資を通じて、教育や刑事司法改革の分野でマイノリティを支援する活動を統括し、企業の社会的責任の範囲を広げました。
  • 印象的な映像作品への出演:2023年の新製品発表会で公開された、俳優のオクタヴィア・スペンサー演じる「母なる自然」との面談シーンに出演したことでも知られます。同社の環境への決意をコミカルかつ印象的に伝え、広報面でもカリスマ的な役割を果たしました。
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