Appleは2025年第3四半期決算発表において、人工知能(AI)への投資を「大幅に増加させる」とCEOティム・クックが宣言しました。これまで慎重な財務戦略を続けてきたAppleですが、競合のGoogleやMicrosoftに後れを取るAI開発で巻き返しを図る方針です(投資家向け電話会談、CNBC取材より)。
クック氏は今年すでに7件の企業買収を実施しており、その多くは小規模としながらも、今後はAI分野のロードマップを加速させるため、より大型のM&Aにも前向きであると述べました(「M&Aによる加速に非常にオープン」)。一方、M&Aの規模については「これまでのものは金額的に大きくない」とクック氏が説明しています。

Appleは既に“Apple Intelligence”というブランドで、リアルタイム翻訳、ライティング支援、トレーニングアシストなど20以上のAI機能を導入済みです。これらは2025年後半にかけてさらに拡張され、パーソナルで高度なSiriが2026年に登場する計画です。
構造面でも変革が進行中。AI開発を担う体制に人員を大量再配置し、CapEx(設備投資)も前年比で大幅に拡大中です。2025年Q3では設備投資が前年Q比で約1.6倍となり、AI関連のデータセンター整備も進む見込みです。
これまではBeatsの買収(2014年:約30億ドル)が史上最大でしたが、現在はPerplexityなどAIスタートアップの大型買収も検討されており、過去の手法からの大きな転換期とも見られます。
Apple株は2025年に入ってから約17%下落していましたが、決算好調とAI強化方針を背景に複数のアナリストが目標株価を引き上げています。JPMorganやシティは目標を2 40~255ドルに設定しましたが、一部は慎重姿勢も継続中です。
クックCEO(ティム・クック)について
ティム・クック(Tim Cook)は1998年にAppleに入社し、元々はサプライチェーンと製造の責任者を務めていました。2011年に故スティーブ・ジョブズの後を受けてCEOに就任すると、品質管理や利益率の改善に注力。忠実な業務遂行と経営手腕により、Appleを世界的な企業へと成長させました。
彼のリーダーシップの特徴は、慎重かつ計画的なアプローチ。大規模なM&Aや冒険的な投資よりも、小規模な買収や自社開発による技術構築を重視するスタイルでした。しかし近年ではAI競争の激化を受け、戦略の転換を余儀なくされつつあります。
公私にわたってプライバシー保護や環境への配慮を重要視し、「プライバシーは人権である」との信念を繰り返し表明。消費者向けの安全性、セキュリティ、透明性を重視するブランドイメージを確立しています。
AIに関してはこれまで慎重な姿勢でしたが、2025年に入り「AIは生涯で最も重大な技術の一つ」と宣言し、社内資源の大部分をAI開発に投入。Siriの刷新、Apple Intelligenceの多機能化、さらなるAI企業買収にも前向きな姿勢を見せるなど、CEOとしての人物像そのものに革新への本気度が現れています



