キオクシアは、業界初の245.76TB容量を誇るNVMeエンタープライズSSD「LC9シリーズ」を開発中と発表しました。このモデルは、PCIe 5.0対応(128 GT/s、NVMe 2.0/NVMe‑MI 1.2c準拠)、2.5インチおよび新規格E3.Lフォームファクターに対応し、生成AI用途に最適化されています。
注目の大容量は、キオクシアの第8世代BiCS FLASH QLCチップ(2 Tb)のダイを32枚積層した8 TBパッケージを搭載することで実現。これは業界初のアプローチで、チップ上のCBA(CMOS directly Bonded to Array)技術によって可能となったものです。
LC9シリーズは、大規模言語モデル(LLM)のトレーニングやRAG(Retrieval Augmented Generation)対応のベクターデータベースなど、生成AIで必要とされる膨大なデータセットに応えるために設計。HDD中心の従来インフラではGPUが待たされるI/Oボトルネックが頻発しますが、LC9は高密度・高効率を実現し、消費電力・冷却コスト・ドライブスロット数の大幅削減によってTCOを改善します。
性能面では、シーケンシャル読み出し最大12GB/s、書き込み3GB/s、ランダム読み1.3M IOPS/書き50k IOPSを実現。ただし、耐久性は0.3 DWPD(Drive Writes Per Day)で、書き込み頻度の少ない用途に最適です。セキュリティ面では、SIE(Sanitize Instant Erase)、SED(Self‑Encrypting Drive)、FIPS‑SED、CNSA 2.0対応のAES‑256+量子耐性署名など、エンタープライズ用途に十分な堅牢性が備わっています。
現在、限定顧客にサンプル出荷が始まっており、2025年8月5–7日にサンタクララで開催される「Future of Memory and Storage 2025」でも正式展示される予定です。競合他社(SolidigmやPhisonなど)の122.88TB製品に比べ、ほぼ2倍という圧倒的スペックで、Sandiskは2026年に256TB、2027年に512TBを目指すと伝えられています。
KIOXIA LC9シリーズの特長:
- 2.5インチおよびE3.Lフォームファクター:最大容量245.76 TB
- E3.Sフォームファクター:最大容量122.88 TB
- PCIe® 5.0 対応予定 (最大 128 GT/s Gen5 シングルx 4、デュアルx 2に対応)
- NVMe™ 2.0、NVMe-MI™ 1.2c準拠
- Open Compute Project (OCP) Datacenter NVMe™ SSD specification v2.5をサポート(一部未対応の仕様があります)
- FDP(Flexible Data Placement)機能をサポート
- セキュリティ オプション:SIE、SED、FIPS SED
- CNSA 2.0対応の暗号アルゴリズムを採用
キオクシア(Kioxia)とは?
- 概要
旧・東芝メモリを母体とする日本発祥のグローバルNANDフラッシュ/SSDメーカー。2019年10月、東芝から分社、改称して現社名に。社名は日本語の「記憶(kioku)」とギリシャ語の「価値(axia)」を組み合わせた造語です。 - 沿革
東芝がNANDフラッシュを1980年代に発明した流れを継承。2018年に分社化、同年にはOCZ(SSDブランド)事業を買収。2020年にLite-OnのSSD部門も取得し、世界市場でNANDメモリの存在感を強化しました。 - 現在の位置付け
多層スタッキング技術に強みを持ち、エンタープライズやコンシューマ向けSSDで高いシェアを誇る(2021年第2四半期時点でNAND SSD市場シェアは約18%)。現在はBain Capital(51%)、東芝(31%)などが出資。



