アップルがサプライチェーンの“自動製造”化を次なる戦略に定めました。報道によると、サプライヤー各社には工場の自動化投資を自己負担で行うよう要求しており、対応しない企業はiPhoneなどの製造契約を失う可能性があるとのことです。
これまでは、アップルが資金協力を通じて設備投資を後押しするケースもありましたが、今回の方針転換により、サプライヤー側がその全額を負担する体制に変化しています。
背景には、米国による関税圧力の高まりがあるようです。国内生産を促す政策に対して、輸入品に大きなコストが課される懸念から、アップル側が製造効率とコスト抑制を強化する意向が見えます。
さらに注目すべきは、2030年までにiPhoneの組立工程を最大50%自動化する計画があるとされ、ロボット技術への本格的な移行期に突入していることです。
一方で、この戦略には重大なリスクも存在します。サプライヤー側の負担が増大し、資金力に乏しい企業は契約の継続が困難になり、業界の再編や雇用喪失にもつながりかねません。一部地域では工場の労働人口に影響を与える可能性も指摘されています。
アップルにとっては品質の平準化やコスト安定化に資する動きですが、サプライヤー各社にとっては“対応できる企業”と“契約を失う企業”とに明確な分かれ道となる局面にあるようです。
アップルのサプライヤー
アップルは複雑かつグローバルなサプライチェーンを持ち、世界中に数百社以上のサプライヤーとの関係があります。以下、代表的な企業とその役割を紹介します。
組立・製造受託(ODM)
- Foxconn(鴻海・ホンハイ):台湾の受託組立世界最大手で、中国をはじめインド、ブラジルなどに巨大工場を展開。
- Pegatron、Wistron、Compal Electronics:Foxconn同様、iPhoneなどの製造を担う主要ODM企業です。
半導体・チップ
- TSMC(台湾):iPhoneなどに搭載されるSoC(Aシリーズチップ)を独占的に製造する重要パートナー。
- Samsung Semiconductor:一部を補完する形で画像センサーなども提供。
ガラス・特殊部材
- Corning(米国):iPhoneやApple Watchのカバーガラスを供給。現在アメリカ・ケンタッキー州で生産ラインを拡張中です(AppleのAMPプログラムの一環)。
半導体装置・素材企業
- Texas Instruments、Applied Materials、Broadcom、GlobalFoundries、GlobalWafers、Coherent、MP Materials:チップ製造やレアアース素材、VCSELレーザーなど、幅広くAppleのサプライチェーンに関わっています。
多国籍展開・インド拠点
- アップルは製造拠点のロケーション多様化を進めており、インドのFoxconn工場(バンガロールなど)、他にもSalcomp(充電器供給)、Sunny Optical(光学部品)などと連携を深めています。
アップルの製造戦略は、自動化推進と地域多様化の両輪で動いています。今後、サプライヤーには自立した投資体力と技術力がより強く求められる時代が訪れようとしています。



