近年、AppleはiPhoneの生産を中国からインドへとシフトさせており、その動きが加速しています。2024年時点で、世界で販売されるiPhoneのうち5台に1台、すなわち約20%がインドで製造されるようになりました。この背景には、米中間の地政学的リスクや、中国のゼロコロナ政策、労働コストの上昇、さらにはサプライチェーンの多様化を目指すAppleの戦略が関係しています。
インド政府は「Make in India」政策を推進しており、Appleにとっては税制優遇措置や労働力の確保といったメリットが大きくなっています。Appleは台湾のサプライヤーであるFoxconn、Pegatron、Wistronなどと提携し、インド南部タミル・ナドゥ州やカルナータカ州に巨大な製造拠点を構築中です。iPhoneの最新モデル(例:iPhone 14や15)もインドでの生産が進められ、今や単なる旧型モデルの製造拠点ではなくなっています。
Appleにとってインドは「製造地」であると同時に「巨大な成長市場」でもあります。インド国内でのiPhone販売数は年々増加しており、Apple Storeの直営店も開設されました。現地での生産が進むことで、輸入税の削減などからインド国内価格の引き下げも期待されています。
この動きはインドにとっても大きな変革をもたらしています。数十万人規模の雇用創出や、エレクトロニクス分野における技術移転、インフラ整備の進展など、国家産業戦略にも大きな追い風となっています。
補足:インドのiPhoneとは?
「インドのiPhone」とは、Appleがインド国内で製造したiPhoneを指します。2020年頃までは主に旧モデル(例:iPhone SEやiPhone XR)の製造が中心でしたが、近年では最新機種も現地で製造されています。品質や機能に違いはなく、中国製と同じ設計基準と厳格な品質管理のもとで生産されており、グローバル市場にも出荷されています。